長い間製版会社に身を置いていた関係もあり、印刷物の刷り直し事例を聞くのは日常茶飯事でした。
製版とは印刷する際のハンコのようなもので、インクの乗る板の事です。4色の場合は4枚の板は黄色、赤、青、黒、に分けられて全色が重なって通常の色になります。
その色配合によってインクの乗る量を調整し微妙な色調整を行っております。
日本は印刷物の色調に関しては世界でもっともシビアな要求をしてくるお国柄だけあって、印刷品質に関しては世界一だと思う。
しかし日本の印刷の品質を支えている、零細企業も含めた印刷会社の平均利益率が1%台(2011年度)だというのは悲しい現実ですが。
確かに日本の商品パンフレットは綺麗です。
出ている商品の色で購入意欲が沸いたりしますから、商品の忠実な色の再現はそれを見る消費者にとってもメリットがあります。
私なども一眼レフカメラ(勿論フィルムカメラの頃)を選ぶ際、大口径58ミリF1.2の標準レンズのレンズ面がかすかな緑色(コーティングの色)に輝くミノルタSR-Tのパンフレットを見て、「かっこいい〜これ欲しい」と思った程ですから。
その色を出す為色々な技を駆使し校正を何度も重ねます。ここまでが私たちの仕事でした。
そしてOKが出た校正を印刷会社さんが校正紙に合うように印刷する訳ですが、印刷機が紙にインキを載せると紙がインキを吸い込む際にじみが出てしまいます。
これがドットゲインと呼ばれるもので、いくら印刷の元データをデジタル管理しても出力はアナログなので多少の誤差は必ず発生します。
厳密に言えば1部1部違うと言っても良いでしょう、その印刷の色のばらつきをΔEという記号で表しΔE3以内に納めるのが理想です。
しかし中には殆ど見分けが付かなくなってくるΔE2以内でないと納得しないお客さんもいるようです。
大企業ほど色調にはシビアです。商品の売れ行きに影響を与える訳ですから仕方ありません。
しかし理解できないのが、コーポレートカラーに異常にシビアなクライアントもいるわけです。
要するに企業のロゴの色やイメージカラーですね。
他に落ち度が無いのにコーポレートカラーの色が違うので「刷り直せ」となる事です。
長くなるので続きは次回と言う事で…。